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シリーズ「吹奏楽の楽器たち」第2回

フルートの仲間は、木管楽器の中で唯一リードを用いない楽器です。他の楽器が葦の茎を乾燥させたリードをマウスピースに取り付けて音を出すのに対し、フルート属は唇の振動をマウスピースで増幅させて(難しく言うと「カルマン渦」という理論だそうですが)音を出します。
フルートに限らず、管楽器は19世紀後半の産業革命を経て、飛躍的に発展しました。木工はもちろん、金属加工の技術が長足の進歩を遂げ、それによって管楽器はその音域を大幅に拡大することが可能になりました。
今回の30周年記念演奏会では3種類のフルートが活躍します。まず、下のピッコロは、管楽器の中で最も高い音域を受け持ちます。フルート属は現在、木管楽器でありながらほとんど金属製が主流になっていますが、ピッコロは木製の管が今でも主流になっています。他のフルートが直管(内部もまっすぐな管)であるのに対し、ピッコロは最高音域の音程を安定させるために、頭部管(唄口のある方)から管の内部が広がって円錐状になっているのが特徴です。オーケストラでも管楽器の「斬り込み隊長」として(3管編成の大オーケストラとたった1本で渡り合うこともしばしばです)、「惑星」の「火星」のような激しい音楽から、鳥のさえずりや歓びの表現など、やわらかな音楽まで、小さい楽器ながらその表現力の幅は意外なほど広いのです。ベートーヴェンの「第九」第4楽章の「歓喜の行進曲」、オネゲルの交響曲第3番「典礼風」のラストでの平和の祈りをこめたソロ、マーラーの「大地の歌」の第5楽章でテノール独唱と絡むソロ、ショスタコーヴィチの交響曲での挑発的で過激な表現などが印象的です。
中の「普通の」フルートは、古代から発音の原理が変わらないため、バッハの昔から現在まで、オーケストラ、そして吹奏楽の花形として活躍しています。吹奏楽では、ソロ・パートだけでなく、アンサンブルとしても重要な役割を担っています。
上はアルト・フルートです。フルート属には現在ではコントラバス・フルートまで存在します(手だけでは楽器を支えられないので、杖のような棒が付いていて、それを床に立てて構えます)が、普通のオーケストラでは概ねこのアルト・フルートがフルート属の最低音域を受け持ちます(20世紀初頭には「バス・フルート」と呼ばれていたようです)。今回の演奏会では、第1部の「シンフォニエッタ」でも第2部の「惑星」でもアルト・フルートを使用します。オーケストラでは、ストラヴィンスキーの「春の祭典」で大活躍するほか、ラヴェルの「ダフニスとクロエ」の「無言劇(第2組曲第2曲)」の長大なフルート・ソロの最後を締めるのはピッコロの最高音からアルトの最低音に至る壮大な半音階の急降下の後の印象的なアルトのつぶやきです。
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2005.8.13 合宿所合奏場にて
by borituba | 2005-08-15 23:49 | おんがく