音楽と鉄道

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2008.1.4 鉄道博物館
音楽と鉄道が私の趣味の柱であることは間違いありませんが、その二つに接点があるのか?というと数少ないながらあるのです。

鉄道を描いた音楽というものがいくつかあります。

19世紀に発明された鉄道は、20世紀初頭には世界各国で交通の主役として興隆します。日本でも明治5年(1872年)10月14日に新橋-横浜間が開通して以来、明治後期(1901年~12年)にはほぼ全国に鉄道路線が敷設されていました。

その後第1次世界大戦によって、軍用としての鉄道が重用され、蒸気機関車の性能は大幅に向上、長大な貨車を牽引する強力機関車や、都市間を短時間で結ぶための高速機関車の開発競争が激化しました。
時はあたかも新世紀。鉄道に限らず機械文明に対する人々の関心は高く、巨大な鉄の塊が轟音と共に疾走する姿は驚異と畏怖の対象となったのです。

そんな中、フランス育ちのスイス人作曲家アルチュール・オネゲル(1892-1955)が、やはり近代文明の象徴である映画のために書いた音楽がありました。
映画のタイトルは「鉄路の白薔薇」といい、蒸気機関車が牽引する急行列車が疾走する場面が数多く登場するため、列車の走行を描写した音楽を書いたのです。当時はまだ映画はサイレントの時代で、音楽も映画館で生演奏するために小編成で、しかも効果音も兼ねた描写的な音楽が数多く作られたのです。

その後、オネゲルはこの音楽を元にして、当時最も速かった蒸気機関車の名をとった「パシフィック231」というタイトルの作品を作りました。「交響的運動(断章)第1番」というサブタイトルが付けられています。編成は3管の大編成に拡大され、より力強い音楽になりました。

ボイラーからの蒸気を全身に漲らせて動輪がゆっくりと回り始め、列車が駅を離れ、次第にスピードを上げていきます。速いストロークで軽快に飛ばし、田園地帯を疾走。やがてスピードはMAXに達し、すさまじい音をたて、駅の構内で轟音とともにブレーキをかけ、動きを止める。
文章だけではなんとも伝えようがないのがもどかしいところですが、音楽は描写的であると当時に美しく、蒸気機関車という機械の「騒音」を美しい「音楽」に変換することに成功しています。

「パシフィック231」というのは蒸気機関車の形式で、前輪2、動輪3、後輪1の配置になっているものです。英国式の愛称名で「パシフィック」と呼ばれ、また「2-C-1」とも表現されます。高速運転に適しており、急行用として各国で作られました。日本でも初代「つばめ」の牽引機だったC51、優美なフォルムから「貴婦人」と呼ばれ愛されたC57など、急行用蒸気機関車として活躍しました。
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2008.1.4 鉄道博物館
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2008.1.4 鉄道博物館
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ジョージ・スチーブンソンが蒸気機関車を発明し、鉄道発祥の地であるイギリスにも素晴らしい作品があります。
生粋のロンドンっ子であるフィリップ・スパーク(1951-)は、英国式金管バンド(ブラスバンド)と吹奏楽を中心に数多くの作品を生み出していますが、その中に「オリエント急行」という作品があります。
全体の流れは「パシフィック231」とほぼ同じで、輝かしい序奏のあと、機関車が動き出し、楽しい汽車の旅が始まります。田園や町を走りぬけ、華やかな大都会の駅に滑り込み、機関車が停まって旅は終わる。というストーリー的な作品ですが、オネゲルの作品に比べ明るく楽しい音楽になっています。

私はこの曲は何度も聴き、また演奏したこともありますが、技術的な難しさが気にならない楽しい曲で、吹くたびに心の中で「汽車の旅」を楽しんでいたものです。「オリエント急行」というタイトルではありますが、私はイギリス各地の保存鉄道に乗っているような素朴でのどかな音楽に感じます。また、この曲を聴いていると、巨大で無骨な、というより「きかんしゃトーマス」のような愛らしい「汽車」のイメージが湧いてくるのです。

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by borituba | 2015-10-14 22:40 | おんがく | Comments(0)