2006年 06月 11日
昭和の電車に見る材質の変遷-2
ステンレス車両、と聞いてみなさんが最初に思い浮かべるのが東急でしょう。初代5000系をベースにした5200系、セミステンレス(骨組は鋼製、外板はステンレス)の6000系を経て、日本初のオールステンレス車である7000系に結実しました。オリジナルは東急からは姿を消し(十和田観光電鉄や水間鉄道で健在)、車体だけ流用した7700系が池上・多摩川線で活躍中です。改造時の検査でも経年劣化がほとんどなく、ステンレス車体の優秀さが証明されました。
その後東急は7200系を経て万能車両8000系、新玉川線(現田園都市線)用の8500系などステンレスカーを本格的に導入、「東急=銀色」というイメージを確立しました。
東急車両がステンレスカーの量産化に成功して、東急以外の会社もステンレスカーの導入を始めました。その誕生の経緯から東急との縁が深い東京地下鉄(旧帝都高速度交通営団)は、日比谷線3000系、東西線5000系でセミステンレスカーを導入しましたが、その後千代田線6000系以降はアルミ車体にシフトしています。
京王では、井の頭線にオールステンレスの3000系を導入しました。現在でも本家には半数が生き残っていますが、全て更新改造され、オリジナルの初期車は廃車や譲渡されています。関東では上毛電鉄で活躍を続けています。
ステンレス車の導入に一歩遅れをとったのが東武です。日比谷線乗り入れ用の2000系が鋼製で、その後の8000系(前面のフォルムなどは実は2000系がベース)が大量かつ長期間に渡って製造されたために、昭和も末期の東上線の有楽町線乗り入れ時になって初のステンレスカー9000系が登場しました。
「昭和のステンレスカー」の特徴は、車体を横に走る細かい波模様(コルゲーション)。これは、ステンレスは錆びにくく鏡のような艶が長持ちするため光の反射が強く、まぶしくなるために波模様をつけてギラつきをおさえています。近年では表面をわざとザラついた感じに仕上げる加工が開発され、細かいコルゲーションは見られなくなりました。東武9000系の後期車や京王8000系は、コルゲーションがほとんどないスッキリしたスタイルになっています。また、技術の革新で普通鋼との接続もできるようになり、京王最新の9000系は前面(白い部分)は鋼製になっています。