2017年 03月 10日
今日から明日への二枚
フランス音楽に心寄せる者としてはオネゲルの誕生日を祝いたいところではありますが、時空を超えて多くの罪なき人々が数時間のうちに命を落とした日でもあるこの日にはとてもそのような気分にはならないのです。
オネゲルは第二次大戦でナチス・ドイツに蹂躙されたフランスで、他国への亡命をせず、「六人組」の仲間で親友だったフランシス・プーランクや指揮者シャルル・ミュンシュらと共に芸術のレジスタンス運動に身を投じて、フランス国内を転々としながら戦争の犠牲者の鎮魂と平和の祈りを込めた作品を書きました。
それらの作品はフランスの、というだけでなく、あらゆる惨禍による犠牲者の鎮魂と平和への希望を込めた普遍的な祈りの音楽であると思います。
今宵はそんな中から3つの作品を選びました。
交響曲第2番(弦楽とトランペットのための)
交響曲第3番「典礼風」
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
劇的オラトリオ「火刑台上のジャンヌ・ダルク」
台本:ポール・クローデル
ネリー・ボルジョー、ミシェル・ファヴォリ(語り)他
チェコ・フィルハーモニー合唱団
キューン児童合唱団
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
セルジュ・ボド(指揮)
オネゲルの5曲の交響曲のうち、大戦中に書かれた第2番と第3番は、まさしく「戦争交響曲」と言ってよく、暗く重苦しい音楽は戦争の悲惨な現実と死者への慟哭を描き、いずれも最後は平和への希望と祈りに満ちた穏やかな音楽となって終わります。
「火刑台上のジャンヌ・ダルク」は、当初舞踊詩として構想されましたが、フランスに戦火が忍び寄る中、当時フランスを代表する詩人で優れた外交官でもあったポール・クローデルが台本を創り、古今のフランスの芸術を取り入れた語り、歌い、奏でる総合的な音楽劇に仕上げた大作で、結果的には戦火による荒廃からの復活と平和への祈りの「芸術のレジスタンス」を象徴する作品となりました。
これらの録音が、かつて同じようにナチス・ドイツに蹂躙され、破壊され、後に今度は北からの戦車に蹂躙されたチェコで成されたことは、オネゲルが作品に込めた平和への祈りが普遍的なものであることを象徴していると思います。
…合掌。