シリーズ・東京の私鉄診断-西武池袋線

1.路線の距離と所要時間(スピード)
池袋-吾野間57.8kmですが、特急レッドアロー「ちちぶ号」と土休日のみ運転される秩父鉄道乗り入れの快速急行以外は全線走り通す列車はなく、実質的には43.7kmの飯能で運転系統は分かれています。本診断では池袋-飯能間を対象とします。標準的な優等列車の急行で所沢まで22分、入間市まで38分、飯能まで47分ですが、大幅に増発された快速急行で所沢以遠の所要時間が短縮されて、入間市まで35分、飯能まで42分になりました。
2.乗入れの形態
練馬から支線(西武有楽町線)を介して東京メトロ有楽町線・副都心線と相互乗り入れを行っています。さらに2013年3月16日からは副都心線を介してかつて創業者同士が最大のライバルであった東急東横線との「歴史的握手」によって乗り入れを開始しました。乗り入れの形態は「合流型」ですが、乗入れ駅が練馬と比較的至近で、ターミナル池袋が関東私鉄としては比較的大きな駅なので池袋-練馬間が切り離されるようなことはなく、また練馬-石神井公園間の複々線完成、最初の待避駅を江古田から一駅手前の東長崎に変更するなどの整備が進み、地下鉄乗入れ列車とのバランスが非常によくなっています。
3.路線の便利度(他路線とのアクセス・優等列車)
西武はまさに東京の西部地区の国鉄空白地帯に路線網を広げたおかげで、競合路線がほぼゼロと言ってよく、そのため他路線とのアクセスも池袋-飯能間にはほとんどなく、練馬での都営地下鉄大江戸線とのアクセスが唯一となっています。
優等列車は、かつては準急と急行だけのシンプルなものでしたが、「殺人ラッシュ」と言われた朝の上り列車の混雑緩和のために、地下鉄乗り入れが始まったころから「通勤○○」の種別が乱立、またハイキング急行の流れを汲んだ土休日の臨時列車の性格が強かった快速急行が「歴史的握手」によって副都心線乗り入れの飯能ゆきの快速をグレードアップする形で大増発され、現在では優等列車の種別が6種類になっています。停車駅は関東私鉄では珍しい「千鳥型」になっています。全体の基準になっている急行の停車駅は石神井公園・ひばりヶ丘・所沢からの各駅、準急は練馬・石神井公園からの各駅、最速の快速急行は練馬・石神井公園・ひばりヶ丘・所沢・小手指・入間市です。

4.ダイヤ(路線内乗継の問題など)と車両
3で延べたとおり、西武はこの地域の唯一の鉄道路線であるため、都心とのアクセスとして非常に重要です。そのため列車のスピードアップと緩急接続による利便性の向上は永遠の課題となります。相互乗り入れ網が広がったことでさらなる利便性の向上が求められましたが、西武はかなり優秀な答えを出していると言えます。東横線で横浜まで足を伸ばすようになったことで、それまで練馬から快速であった乗り入れの優等列車をなんと快速急行にグレードアップ(これにより快速急行はそれまで通過していた練馬に停車)。「区間準急」などと呼ばれてあまり評判の良くなかった乗り入れ準急は消滅しました。また、練馬駅は高架化した時に外側1線を急行・特急の通過線にして上下3線で島式2面ホームとしていますが、これに加えて練馬-石神井公園間の複々線完成で石神井公園に電留線が作られ、緩急接続だけでなく始発駅としても機能するようになり、主に乗り入れ列車の折り返し地点となりました。各停の行先は近年整理され、豊島園(実質上の練馬ゆき)、石神井公園、保谷、小手指(野球開催時は西武球場前ゆき)に統一されています。各停は練馬・石神井公園・ひばりヶ丘で最低1回は緩急接続するダイヤになっています。
このような路線の整備により、急行停車駅での緩急接続が大幅にスムーズになり、乗り継ぎの利便性も向上しました。現在は乗入れ列車の本数が若干アンバランスですが、これもいずれ東京メトロ小竹向原駅の連絡線が完成すれば解消されるでしょう。また、乗り入れ列車が同じ池袋を経由するので、練馬から乗り入れ経由と、池袋まで乗り通して乗り換える両方のルートで通用する定期券「だぶるーと」を発売したのも特筆的なサービスと言えましょう。
車両については東武東上線の診断で詳述しましたので、西武車だけ挙げておきます。最新は「すまいる君」30000系。以下「泣きべそ君」20000系、「エコちゃん」9000系、「馬鹿殿」6000系、3000系、2000系です。長年西武の顔として活躍してきた101系は昨年惜しまれつつ本線系統からは引退しました。メトロ車は従来通り、「歴史的握手」により東急車が入ってくるようになりました。
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2011.7.3 西武鉄道池袋線練馬高野台駅
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2011.7.3 西武鉄道池袋線練馬高野台駅
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2012.5.5 西武鉄道池袋線中村橋駅
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2012.6.30 西武鉄道池袋線富士見台駅
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2012.6.30 西武鉄道池袋線練馬高野台駅
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2013.3.16 東京急行電鉄東横線都立大学駅
5.総合診断
西武は東急との「歴史的握手」に向け、そのメリットを最大限に生かすべく近年着々と手を打ってきました。その効果で合流型乗り入れの不利を最小限にとどめるだけでなく、地上区間の輸送力も向上させることに成功しました。このあたりは今一つ乗り入れのメリットを生かしきれていない東武東上線とは対照的と言ってよく、「歴史的握手」は西武側に関してはひとまず大成功と言っていいのではないでしょうか。残された課題は運賃などソフト面ですが、ハード面ではかなり完成度が高く、これからの首都圏のアクセス網として模範的なものになるでしょう。星一つマイナスなのは混雑緩和がまだ充分とは言えないのと、アメリカのカネの亡者どもの圧力で路線の先行きに若干の不安要素がある点です。
★★★★(星は5つが最高です)
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by borituba | 2013-05-12 19:54 | てつどう | Comments(0)