シリーズ「吹奏楽の楽器たち」第7回

今日はトロンボーンをご紹介します。
トロンボーンは、古くから教会で使われていた楽器で、原型はルネサンス期にまで遡ることができます。現在でも金管アンサンブルの重要なレパートリーになっているガブリエリの作品などは、すべてミサのコーラスと説教をつなぐ間奏として作られたものです。
なぜトロンボーンが教会で重用されたか?管楽器の中でトロンボーンは最も人声に近いとされ、ミサ曲やオラトリオの中で、「神の声」あるいは「神との邂逅」を表す記号として使われました。当時音楽に限らず芸術において「宗教と世俗」には厳密な区別があり、宗教的な題材を世俗に持ち込んだり、またその逆は厳しく戒められていました(ワーグナーの「タンホイザー」や「ニュルンベルクのマイスタージンガー」では、その戒めを破ったり、規則を守る苦心などが物語の重要なファクターになっています)。そのため、トロンボーンは「聖職者の楽器」などと呼ばれ、世俗曲への使用は禁じられていました。
ハイドンは「十字架上の七つの言葉」やオラトリオ「天地創造」などで、モーツァルトは「ハ短調ミサ曲」や「レクィエム」など宗教曲ではトロンボーンを使っていますが、あれほどたくさん書いた交響曲には一曲もトロンボーンを使っていません。それは「使いたくても使えなかったから」なのです。それを打ち破ったのがベートーヴェン。第5交響曲「運命」で3本のトロンボーンを使い、初演時には物議を醸したのです。後の第9交響曲では、「百万の民よ、抱き合え!」というコラールのバックに荘重なアンサンブルを聞かせますが、本来の使い方にベートーヴェンが「立ち帰った」瞬間といえるでしょうか。
以来、トロンボーンはオーケストラに取り入れられ、金管楽器の中で中低音の要として大活躍することになります。軍楽隊、聖歌隊(!)経由でジャズにも入り、ビッグバンドの花形へと発展します。
吹奏楽ではもちろん金管の中低音を支えるほか、ポップス、クラシックを問わず主役、脇役と大活躍します。ソロだけでなく、アンサンブルとしても通常テナー(テナーバス・画像右)2本とバストロンボーン(画像左)1本でトリオを成し、教会出身らしい荘重な和音を響かせます。また、テナー3+バス1のクァルテットは非常にバランスが良く、金管アンサンブルの定番になっています。
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2005.8.13 合宿所合奏場にて
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by borituba | 2005-08-22 21:02 | おんがく | Comments(0)