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シリーズ-東京の地下鉄を診断する:エピローグ

約1年をかけて東京の地下鉄を見てきました。各路線の長所と問題点を探る中で、東京の都市交通の問題点がいろいろ浮かび上がってきて、自分としても非常に興味深いことでした。
そこで、全13路線の診断を終えての総括をしてみたいと思います。


1.曲がり角に来た「相互乗り入れ」
全13路線のうち、銀座線・丸の内線・都営大江戸線を除く10路線で行われている相互乗り入れ。当初は「乗換えなしの都心直結」というメリットが大いに歓迎されたものですが、近年ではいろいろと問題がでてきました。乗り入れ相手との連携がうまくいっていない路線(千代田線・都営浅草線)路線共用区間の発生で乗り入れ列車の整理がつかなくなった路線(有楽町線と副都心線)沿線の変化で乗り入れのメリットが低下した路線(日比谷線の東急方)乗り入れ相手の高額すぎる運賃が乗り入れのメリットを殺してしまっている路線(東西線と東葉高速、南北線と埼玉高速)沿線で事故や故障が多く、乗り入れ中止が相次いでしまう路線(東西線とJR中央線、千代田線とJR常磐線)など、相互乗り入れをより便利で使いやすくするための改革が必要になってきたのではないでしょうか?
また、乗り入れを行なう路線が偏重しているというのも問題点として挙げられます。ことに東急と東武への乗り入れは、ダイヤを複雑にするだけで問題が多いと言えます。東急東横線日比谷線と南北線(東急目黒線)の2線に加え近い将来副都心線が入ってきてもはや飽和状態東武伊勢崎線には日比谷線と半蔵門線が乗り入れていますが、半蔵門線清澄白河・押上止まりがある関係で便利度に問題あり、日比谷線は東武線内も各停のままで速達性に難ありと、乗り入れのメリットを生かし切れていません。各線とも問題を抱えており、乗り入れ体系の整理が今後の課題と言えます。今回は詳述しませんでしたが有楽町・副都心線東武東上線の関係も沿線に住むものとしては非常に問題が多く感じます(有楽町線副都心線の診断で詳述しています)。
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2009.7.12 東京地下鉄日比谷線南千住駅
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2009.2.21 東京地下鉄千代田線代々木上原駅
2.本当に必要か?急行運転
都営新宿線での急行都営浅草線でのエアポート快速有楽町線準急副都心線急行と、ここ10年以内で地下鉄での急行運転が相次いで始まっています。
しかし、それが便利度のアップにつながっているかといえば、そうも言えないのが現実です。副都心線を除けば東京の地下鉄は計画当初は急行運転を想定しておらず、急行運転に欠かすことのできない待避駅もほとんどありません。急行運転がうまく機能しているほとんど唯一の路線と言える都営新宿線も、急行の構想が後付けであったため、待避駅岩本町と瑞江と東側に偏っており、ダイヤ組成の悩みのタネになっているようです。また、都営浅草線の診断で述べた通りエアポート快速各停にくらべ6分の短縮に留まっていますが、待避駅がなく「停まらないだけ速い」というだけでは時間の短縮には限界があり、既存の施設の大幅な改修が難しい地下鉄の弱点が出た形になっています。
そもそも地下鉄というのは踏切の無い地下を走るということで、通常の鉄道にくらべ高速を維持できるので、ことさら急行運転しなくとも充分速い鉄道です。従って、相互乗り入れの整理も含めて、ダイヤ組成の工夫で対応すれば各停のみでも速達性は確保できるのではないかと思います。
つい昨日の話ですが、大手町から池袋まで丸の内線に乗りましたが、池袋まで意外なほど速かったのに改めて驚きました。相互乗り入れもなく、高速運転には不利と言われる第三軌条式であるにもかかわらず副都心と都心の間の速達性を維持できているのはさすがと思った次第です。この辺りが丸の内線が今でも池袋と都心を結ぶメインルートであり続けるファクターだと思うと同時に、有楽町線や副都心線ができても混雑率が改善されない原因だと思います。
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2009.9.1 西武鉄道池袋線中村橋駅
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2009.9.13 京成電鉄押上線四ツ木駅
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2009.11.15 東京地下鉄丸の内線後楽園-本郷三丁目間
.おわりに
営団東京メトロとなり完全民営化したことで、東京の地下鉄は新時代に入りました。しかし、上述した問題も含め、まだまだ試行錯誤期で、ある意味迷走しているというのが正直な実感です。
ほとんどの面で遅れをとっていた感のあった都営地下鉄もようやく重い腰を上げて路線によってはかなり充実してきたと言えますが、オリンピック誘致などの「ムダ使い」や財政難のおかげでいささかペースダウンしてきているのは残念です。
このような東京の地下鉄に今一番求められているのは「利用者目線」だと思います。平行路線が少ない関東では乗客の動態が固定化している分おとなしく、あまり速さや便利度への注文が強くない傾向がありますが、だからといってそれにあぐらをかいていてはいけないと思います。バリアフリーや美観への取り組みはもちろんですが、鉄道事業者である以上は「使いやすくて速い」のが一番の使命であり、利用者の眼から見た便利度の検証が常に必要なのではないでしょうか。
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2009.10.10 小田急電鉄小田原線千歳船橋駅
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2009.9.13 京成電鉄押上線八広駅
by borituba | 2009-11-23 22:05 | てつどう